【裁判傍聴記】ファミマでクレカを不正利用したシングルマザー、子供の前で車上荒らしを実行
今回の裁判は5月下旬に札幌地裁で開かれた刑事事件。この日は、窃盗と詐欺の罪に問われている女の追起訴審理(窃盗分)が行われた。
女は今年4月末に起訴。今年1月末に札幌市南区にあるコンビニ・ファミリーマートで車上荒らしを起こし、対象者のクレジットカードを窃盗して使用した。女はアイコス(電子タバコ)など合計2万621円分のものを不正に購入したという。検察官が朗読した起訴状によると、女は「クレジットカードは他人のものだとわかっていた。(盗んだ)商品は自分や子供で使ったり食べたりする予定だった」と供述したそうだ。
母親が証人として出廷「まっとうに生きて」
この日、証人として被告人の母が出廷した。証人によると、証人は被告と喧嘩したため3か月ほど顔を合わせていなかったという。被告とは3回ほど面会し、体のことや精神的なこと、子供のことについて話し合った。
被告は近頃に離婚してから精神的に不安定になり、証人は「離婚してから被告がおかしくなった。今後はまっとうに生きて」と強調した。検察の尋問に証人は「事件を起こす前にも『お金を貸してほしい』と言われることはあった。だが、何もしていない」と金の催促はあったものの、金は一切貸していないと明かした。
被告人質問。
弁護人は被告に問うた。「なぜこのようなことをしたのか」と。
被告は答えた。
「車上荒らしも実行してしまった。お年玉やクリスマスプレゼントなど年末年始の出費、スキー学習のバス代、保育園代など、想定外の出費もあったため金が必要だった。自分で何とかしようと考えたが、その後に車上荒らしを思いついた。こんなに大ごとになるとは思わなかった」などと話した。
アイコスは自分で使うため
被告は続ける。
「アイコスは自分で使うために買った。本体が一番高かった。自分がその分の金額を払わなくて済むから犯行を実行した」
被告は被害者側に5万円を弁済している。
「児童手当と生活保護費などから出した。仕事で使うであろう資料も、車上荒らしの際に捨ててしまったし、申し訳ない」と弁済額が2万円を超えた理由を説明した。
被告はもともと生活保護を受給していたが、事件後に保釈された際、生活保護は止まった。
「その後は、ティッシュ配りやタイミーで金を稼いでいる。保釈後10日以上は働いており、1日5000~7000円くらいの収入がある」
検察が追及する。
検察「今回、このような事件を起こした。それまでは生活をやりくりできていたの?」
被告「これまではできていた。自分のメンタルの弱さが今回の事態を招いた。車上荒らしは今回だけではなく、5回ほどやった」
検察「あなたが犯行に及んでいる間(車上荒らし)、お子さんはどうしていたの」
被告「車に乗ったままでした」
検察「子供の目の前で犯行したのね」
被告「はい」
検察「じゃあ、お子さんはどうしていたの」
被告「車の中にいました」
検察「あなたの真似とかしなかった?」
被告「上の子は私と車のドアを一緒にガチャガチャしていた」
検察「自分の子供にも犯罪の一端を担わせるところだったんですよ。わかります?」
被告「はい」
なんということだ。子供の目の前で犯行に及ぶとは。包み隠さず言うとすれば「最低の母親」だろう。
最後に裁判長が聞く。
「財布などを盗んだ。これではあなたの個人情報も知れ渡ってしまう。保育園にいられなくなるのでは?」
被告「『生活のために』と盗んだ。今後は二度とこのようなことはしない」
検察側は「子供を送り迎えするときの犯行で、盗んで使用したクレジットカードを少額ずつ使うなど、犯行内容が悪質」などとして懲役2年を求刑した。
クレカ不正利用額は年々増加、24年は555億円
クレジットカードを使用する場合、少額であれば暗証番号を入力せずとも決済できる場合もある。ただ2025年4月からは、原則、暗証番号の入力が必須化。しかし、1万円か1万5000円以下の決済でタッチ決済する場合、タッチ決済か暗証番号入力を飛ばし、サインすることで本人認証する方式は継続する。
日本クレジット協会によると、クレジットカード不正利用額は年々増えている。2015年に120.9億円だった被害額は2019年274.1億円、2024年には555.0億円となっており、注意が必要だ。

クレジットカード不正利用額の推移(日本クレジットカード協会調べ)。縦軸単位は億円。2024年は555.0億円(本稿記者作成)。
車上荒らしをしたシングルマザーの判決は6月上旬、札幌地裁で言い渡される。
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